電波天文学とは

研究紹介(その1)

我々は電波天文学の研究室です。電波天文学とは,宇宙からやってくる電波の観測を手段とする天文学の一分野です。とはいっても多くの方にとって,その内容は今ひとつピンとこないことでしょう。そこでここでは,電波天文学とはどんな学問分野なのかを簡単に説明したいと思います。

そもそも天文学とは?

天文学とは,宇宙に存在している天体や物質を調べる学問です。宇宙に存在しているものといえば,「星」を真っ先に思い浮かべることでしょう。人里離れた暗い場所で夜空を見上げると,多くの星々からやってくる光を確認できます。実際,人間の眼で見える光(可視光と呼びます)による宇宙の観測は,有史以来,あらゆる文明で行われてきました。いわば太古の昔から人類は,宇宙,あるいは我々自身が存在している世界の有り様に,思いを巡らせてきたわけです。

「見えない」ものを「みる」

では,宇宙には星以外のものは存在しないのでしょうか。あるいは,可視光で見えないものは存在しないのでしょうか。どちらも『ある』というのが,その答えです。実は現代の天文学では,可視光だけでなく,宇宙から届くあらゆる種類の光(電磁波)によって観測がなされています。そして,可視光では光っていなくてもそれ以外の電磁波を放出する天体や物質を捉えることで,可視光だけでは知ることができなかった宇宙の姿が次々と明かされています。金子みすずさんの有名な詩に『見えぬものでもあるんだよ』という一節がありますが,可視光以外の電磁波を出しているものは,それを捉えることで『みえるもの』になるわけです。

電波天文学の対象

その有力な手法の一つが電波による観測です。星同士を隔てている空間は,完全な空っぽの真空という訳ではありません。そこには,星間物質と呼ばれる希薄な物質が存在します。星間物質はほとんどの場合,可視光では光っていませんが,電波は放出しています。つまり,電波で観測すれば星間物質を捉えることができるのです。この星間物質は,自らの万有引力で収縮し寄り集まることで星を形作ります。一方,星は永遠に輝き続けるわけではなくやがて死を迎えますが,その最期に構成物質の大部分は宇宙空間へと放出され,星間物質へと還っていきます。このように宇宙の中で物質は,星と星間物質という二つの存在形態を往来しながら,進化を続けています。電波天文学はこの星間物質の全貌を捉える,天文学の主要な一分野といえます。


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